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2021年4月23日 記事掲載

埼北市町村ガイド

埼北よみうり配布エリアの22市町村を順に紹介していく連載コーナー。歴史、文化、地理、産業、観光など、各市町村の特色を掲載いたします。

Vol.1 熊谷市

熊谷次郎直実像

熊谷駅北口前に設置されている熊谷次郎直実像

幡羅官衙遺跡群

上空から見た国指定史跡「幡羅官衙遺跡群」

熊谷の歴史の幕開けは、旧石器時代と考えられ、豊かな自然に恵まれる中で縄文時代から弥生時代へと続く人々の営みがあった。古墳時代には国指定史跡「宮塚古墳」ほか多くの古墳が築造され、奈良・平安時代には、西別府に位置する国指定史跡「幡羅官衙遺跡群」などの存在が確認され、当時の歴史を解明するための重要な遺跡に位置付けられている。

平安時代末期には多くの武士団が出現し、斎藤別当実盛や熊谷次郎直実など後世に名を残す武士が活躍した。江戸時代には熊谷宿が中山道の宿場町として栄え、秩父往還などの街道、さらに荒川、利根川には渡船場や河岸があり、交通の要衝として発展した。

明治時代になると、一時期熊谷県の県庁所在地になるなど地域の中心都市となり、多くの先覚者たちが産業や文化など多方面で活躍、熊谷地域の発展の基礎を築いた。戦後は県内唯一の戦災都市として復興を進め、県北の雄都としての誇りとともに産業の発展と芸術文化の振興が進められた。21世紀に入り、熊谷、大里、妻沼、江南の市町が合併し新市として新たな一歩を踏み出した。

「熊谷」の語源は諸説あり、有力な説の一つが、荒川の流れと関係しているという説(『埼玉県地名誌』より)。荒川が曲がっている地で人々が生活し、「曲谷(くまかや)」と呼ばれ、「曲(くま)」の文字が同じ読み方の「熊」に変化し地名となったとされている。

八木橋百貨店

八木橋百貨店

中山道の宿場町として栄えた熊谷は、荒川と利根川の水運を生かした交通の要衝であり、古くから商工業も盛んだった。現在は新幹線や国道17号線を中心に多くの人々が行き交う県北エリアの一大拠点となっている。

 

産業面においては製造品出荷額、年間商品販売額などが県内上位にあり、県北の産業が集積。商都としての伝統を引き継ぎ、熊谷駅周辺の商業施設や八木橋百貨店などは多くの人でにぎわう。

 

農業分野では、一大消費地である東京に近接し、交通インフラも充実していることから、露地野菜の生産が盛んで、県内屈指の農業産出額を誇る。現在では農業の法人化・大規模化の支援を始め、特産の「やまといも」や「妻沼ねぎ」のさらなるブランド化の推進、農産物の6次産業化に取り組んでいる。

 

埼玉県は、うどんの生産量が香川県に次いで全国2位で、特に熊谷地域の小麦収穫量は本州トップレベルとなっている。古くから二毛作が行われ、関東圏で有数の穀倉地帯であった。近世以降、小麦を原料とした、うどんやフライなどの郷土料理が広まり、人々の生活に息づいている。

五家宝

銘菓の五家宝

江戸時代以降、中山道の宿場町として京や江戸の影響を受けながら、熊谷独自の文化風土が形づくられた。

 熊谷の中心を流れる星川周辺には多くの染物産業が集まり、後に「熊谷染」と呼ばれる工芸文化を育てた。妻沼聖天山の本殿「歓喜院聖天堂」をはじめ、熊谷の名工たちが協演した建造物や芸術作品も多く、現在まで大切に保存されている。

食文化としては、もち米やきな粉を使った熊谷名物の和菓子「五家宝」や妻沼の「いなり寿司」、熊谷産小麦によるうどんやフライなどが熊谷のソウルフードとして認知度を高めている。

ラグビー少年像

1991年に全国優勝した熊谷工業高ラグビー部の活躍などから、ラグビー文化が定着。「ラグビータウン熊谷」を合言葉に、ラグビーによるまちづくり事業を進めている。全国的にも数少ないラグビー専用スタジアム「熊谷ラグビー場」は毎年春に開催されている全国高校選抜ラグビー大会の会場になっていて、2019年のラグビーワールドカップの試合会場にもなった。

〝ラグビータウン熊谷〟を象徴する熊谷駅前の像「ラグビーボールと少年」

大温度計

八木橋百貨店の大温度計

利根川、荒川という日本を代表する河川が流れ、豊かな水と肥沃な大地により自然環境が形成されている。市域は、東西に約14㎞、南北に約20㎞、面積は159.82k㎡であり、県内で5番目の広さを誇る。市域の大半が平坦な地形で、西部は櫛挽台地、南部は江南台地、比企丘陵の一部となっている。市内には多くの河川が流れ、南部に広がる平地林や斜面林 、谷地など、様々な自然環境があり、多種多様な動植物が生息。世界で熊谷にのみ生息が確認されている絶滅危惧種「ムサシトミヨ」の存在は大きい。

熊谷といえば、夏の気温の高さが全国的に知られている。夏季は内陸性気候や秩父山系からのフェーン現象などの影響により、日中の気温が非常に高くなる傾向にあり、ニュースなどでしばしば取り上げられる。2018年7月23日、日本の観測史上最高となる41.1℃を記録した。

聖天堂

国宝「歓喜院聖天堂」

聖天様の愛称で親しまれ国宝「歓喜院聖天堂」を有する妻沼聖天山は特に縁結びのご利益があるとして季節を問わず多くの参拝者が訪れる。  市を代表する大きなイベントとしては「熊谷さくらマラソン大会」「熊谷うちわ祭」「熊谷花火大会」などが挙げられる。特に熊谷うちわ祭は、「関東一の祗園」と称され熊谷の夏を彩る伝統行事として市内各地で保存される地域芸能などとともに重要な郷土文化となっている。

 

熊谷駅からすぐ近く荒川沿いの「熊谷桜堤」は、日本さくら名所100選に選ばれている国内屈指の名所で、多くの花見客でにぎわう。

平安時代末期の源平合戦の熊谷次郎直実や斎藤別当実盛、鎌倉幕府評定衆となる中条氏や戦国時代に忍城主となる成田氏など、多くの武士が市内を本拠とした。

 

江戸時代には熊谷宿本陣を担った竹井家や慈善家の吉田市右衛門家が地域に貢献。博覧強記の知識人である渡辺崋山や寺門静軒が熊谷に滞留したほか、幕末から明治時代にかけて根岸友山と武香、竹井澹如らが新たな時代の扉を開いた。

荻野吟子

荻野吟子

同時期には南画の代表的画家で熊谷に画室を設けた奥原晴湖や、熊谷出身で日本初の公認女性医師となった荻野吟子の挑戦が続いたほか、麦作の権田愛三や養蚕の鯨井勘衛などの農産分野での活躍があった。近代洋画の旗手である森田恒友や大久保喜一の存在が次世代に大きな影響を与えた。戦後、現代俳句を先導した俳人の金子兜太と、サスペンス作家を代表する森村誠一の存在が大きな注目を集めた。トップアスリートでは2018年サッカーW杯で活躍した原口元気らがいる。

 
熊谷ラグビー場

熊谷ラグビー場

熊谷ラグビー場はラグビートップリーグ「パナソニック ワイルドナイツ」のホームゲームの会場として使用され、今夏にクラブハウスや練習グラウンドなどがラグビー場の隣に完成予定。人気選手が多く所属する強豪チームがやって来ることで、ラグビーでのさらなる活性化が期待されている。

 

また、国道17号バイパス沿いに『(仮称)道の駅「くまがや」』の建設も計画されている。本州一の収穫量を誇る小麦を核とした「日本を代表する〝食〟のテーマパーク」をコンセプトに、2024年の工事着手に向け準備が進められていて、食を通じた活性化の期待も高まっている。

熊谷市のデータ

人口 194,542人(令和3年4月1日現在)
世帯数 87,758(令和3年4月1日現在)
面積 159.82㎢
総生産額 1兆634億6,200万円(平成30年度)

取材協力:熊谷市江南文化財センター 山下祐樹主査(学芸員)

熊谷市地図

Copyright © saihokuyomiuri.

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2021年4月23日 記事掲載

埼北市町村ガイド

Vol.1 熊谷市

熊谷次郎直実像

熊谷駅北口前に設置されている熊谷次郎直実像

幡羅官衙遺跡群

上空から見た国指定史跡「幡羅官衙遺跡群」

熊谷の歴史の幕開けは、旧石器時代と考えられ、豊かな自然に恵まれる中で縄文時代から弥生時代へと続く人々の営みがあった。古墳時代には国指定史跡「宮塚古墳」ほか多くの古墳が築造され、奈良・平安時代には、西別府に位置する国指定史跡「幡羅官衙遺跡群」などの存在が確認され、当時の歴史を解明するための重要な遺跡に位置付けられている。

平安時代末期には多くの武士団が出現し、斎藤別当実盛や熊谷次郎直実など後世に名を残す武士が活躍した。江戸時代には熊谷宿が中山道の宿場町として栄え、秩父往還などの街道、さらに荒川、利根川には渡船場や河岸があり、交通の要衝として発展した。

明治時代になると、一時期熊谷県の県庁所在地になるなど地域の中心都市となり、多くの先覚者たちが産業や文化など多方面で活躍、熊谷地域の発展の基礎を築いた。戦後は県内唯一の戦災都市として復興を進め、県北の雄都としての誇りとともに産業の発展と芸術文化の振興が進められた。21世紀に入り、熊谷、大里、妻沼、江南の市町が合併し新市として新たな一歩を踏み出した。

「熊谷」の語源は諸説あり、有力な説の一つが、荒川の流れと関係しているという説(『埼玉県地名誌』より)。荒川が曲がっている地で人々が生活し、「曲谷(くまかや)」と呼ばれ、「曲(くま)」の文字が同じ読み方の「熊」に変化し地名となったとされている。

八木橋百貨店

八木橋百貨店

中山道の宿場町として栄えた熊谷は、荒川と利根川の水運を生かした交通の要衝であり、古くから商工業も盛んだった。現在は新幹線や国道17号線を中心に多くの人々が行き交う県北エリアの一大拠点となっている。

 

産業面においては製造品出荷額、年間商品販売額などが県内上位にあり、県北の産業が集積。商都としての伝統を引き継ぎ、熊谷駅周辺の商業施設や八木橋百貨店などは多くの人でにぎわう。

 

農業分野では、一大消費地である東京に近接し、交通インフラも充実していることから、露地野菜の生産が盛んで、県内屈指の農業産出額を誇る。現在では農業の法人化・大規模化の支援を始め、特産の「やまといも」や「妻沼ねぎ」のさらなるブランド化の推進、農産物の6次産業化に取り組んでいる。

 

埼玉県は、うどんの生産量が香川県に次いで全国2位で、特に熊谷地域の小麦収穫量は本州トップレベルとなっている。古くから二毛作が行われ、関東圏で有数の穀倉地帯であった。近世以降、小麦を原料とした、うどんやフライなどの郷土料理が広まり、人々の生活に息づいている。

五家宝

銘菓の五家宝

江戸時代以降、中山道の宿場町として京や江戸の影響を受けながら、熊谷独自の文化風土が形づくられた。

 熊谷の中心を流れる星川周辺には多くの染物産業が集まり、後に「熊谷染」と呼ばれる工芸文化を育てた。妻沼聖天山の本殿「歓喜院聖天堂」をはじめ、熊谷の名工たちが協演した建造物や芸術作品も多く、現在まで大切に保存されている。

食文化としては、もち米やきな粉を使った熊谷名物の和菓子「五家宝」や妻沼の「いなり寿司」、熊谷産小麦によるうどんやフライなどが熊谷のソウルフードとして認知度を高めている。

ラグビー少年像

〝ラグビータウン熊谷〟を象徴する熊谷駅前の像
「ラグビーボールと少年」

1991年に全国優勝した熊谷工業高ラグビー部の活躍などから、ラグビー文化が定着。「ラグビータウン熊谷」を合言葉に、ラグビーによるまちづくり事業を進めている。全国的にも数少ないラグビー専用スタジアム「熊谷ラグビー場」は毎年春に開催されている全国高校選抜ラグビー大会の会場になっていて、2019年のラグビーワールドカップの試合会場にもなった。

大温度計

八木橋百貨店の大温度計

利根川、荒川という日本を代表する河川が流れ、豊かな水と肥沃な大地により自然環境が形成されている。市域は、東西に約14㎞、南北に約20㎞、面積は159.82k㎡であり、県内で5番目の広さを誇る。市域の大半が平坦な地形で、西部は櫛挽台地、南部は江南台地、比企丘陵の一部となっている。市内には多くの河川が流れ、南部に広がる平地林や斜面林 、谷地など、様々な自然環境があり、多種多様な動植物が生息。世界で熊谷にのみ生息が確認されている絶滅危惧種「ムサシトミヨ」の存在は大きい。

熊谷といえば、夏の気温の高さが全国的に知られている。夏季は内陸性気候や秩父山系からのフェーン現象などの影響により、日中の気温が非常に高くなる傾向にあり、ニュースなどでしばしば取り上げられる。2018年7月23日、日本の観測史上最高となる41.1℃を記録した。

聖天堂

国宝「歓喜院聖天堂」

聖天様の愛称で親しまれ国宝「歓喜院聖天堂」を有する妻沼聖天山は特に縁結びのご利益があるとして季節を問わず多くの参拝者が訪れる。  市を代表する大きなイベントとしては「熊谷さくらマラソン大会」「熊谷うちわ祭」「熊谷花火大会」などが挙げられる。特に熊谷うちわ祭は、「関東一の祗園」と称され熊谷の夏を彩る伝統行事として市内各地で保存される地域芸能などとともに重要な郷土文化となっている。

 

熊谷駅からすぐ近く荒川沿いの「熊谷桜堤」は、日本さくら名所100選に選ばれている国内屈指の名所で、多くの花見客でにぎわう。

平安時代末期の源平合戦の熊谷次郎直実や斎藤別当実盛、鎌倉幕府評定衆となる中条氏や戦国時代に忍城主となる成田氏など、多くの武士が市内を本拠とした。

 

江戸時代には熊谷宿本陣を担った竹井家や慈善家の吉田市右衛門家が地域に貢献。博覧強記の知識人である渡辺崋山や寺門静軒が熊谷に滞留したほか、幕末から明治時代にかけて根岸友山と武香、竹井澹如らが新たな時代の扉を開いた。

荻野吟子

荻野吟子

同時期には南画の代表的画家で熊谷に画室を設けた奥原晴湖や、熊谷出身で日本初の公認女性医師となった荻野吟子の挑戦が続いたほか、麦作の権田愛三や養蚕の鯨井勘衛などの農産分野での活躍があった。近代洋画の旗手である森田恒友や大久保喜一の存在が次世代に大きな影響を与えた。戦後、現代俳句を先導した俳人の金子兜太と、サスペンス作家を代表する森村誠一の存在が大きな注目を集めた。トップアスリートでは2018年サッカーW杯で活躍した原口元気らがいる。

 
熊谷ラグビー場

熊谷ラグビー場

熊谷ラグビー場はラグビートップリーグ「パナソニック ワイルドナイツ」のホームゲームの会場として使用され、今夏にクラブハウスや練習グラウンドなどがラグビー場の隣に完成予定。人気選手が多く所属する強豪チームがやって来ることで、ラグビーでのさらなる活性化が期待されている。

 

また、国道17号バイパス沿いに『(仮称)道の駅「くまがや」』の建設も計画されている。本州一の収穫量を誇る小麦を核とした「日本を代表する〝食〟のテーマパーク」をコンセプトに、2024年の工事着手に向け準備が進められていて、食を通じた活性化の期待も高まっている。

熊谷市のデータ

熊谷市地図
人口 194,542人(令和3年4月1日現在)
世帯数 87,758(令和3年4月1日現在)
面積 159.82㎢
総生産額 1兆634億6,200万円(平成30年度)

取材協力:熊谷市江南文化財センター 山下祐樹主査(学芸員)